「あのね、今日のコンテストもすごかったの!」
「どんなふうに?」
「えっとね、……」
手をつないで帰る夜の道。
ぼんやりと話を聞きながら、ふと昔のことを思い出す。
「あら、こんなところに迷い込んで…けほっ、かわいそうに、ひとりぼっちで怖かったでしょう?こほこほ」
出会いはちょうど、こんな夜の森の中。
「大丈夫、怖がらないで、こっちにおいで?」
忌み嫌われていた存在の僕を温かく迎えてくれた。
優しくしてくれた貴女の恩に報いたくて、僕は。
病弱な彼女のために、何かをしてあげたくて。
「――、こんにちは」
「あなたが作った薬、本当によく効くわ。本当に、今までの具合の悪さが嘘のよう」
「ありがとう」
「何を言ってるの?お礼を言うのは私の方よ?」
彼女のおかげで、僕は薬を作ることを学んだ。
「――、離れろ、そいつは化け狐だ!」
「化け狐……?だから、何?関係ないわ、私は一緒にいたいもの」
「…本当に、いいの?」
「私の命の恩人ですもの…追い払うわけがないでしょう?」
正体を知っても、なんら変わらずに接してくれた。
「…ごめんね、私、やっぱり――」
「――!」
別れのときは、突然訪れて。
僕は禁忌を犯し。
罰を受けた。
だから僕は、彼女の名前を思い出すことすら叶わない――。
そう、恋は常に危険を伴うもの。
だけどこんな考えはもう古いのだろうか。
側で楽しそうに話をする少女を見ると、そんな考えが頭をよぎる。
「テンちゃん、てーんちゃん!」
「…ん?」
「大丈夫?ぼーっとしちゃって……あ!ごめんね、私ばっかり話してたからだよね…」
「ううん。話はちゃんと聞いてたよ?とても楽しそうに話してたから僕まで楽しくなった。話をつづけて?」
「それでね、……」
きっと少女は気付いていないのだろう。
さっきからずっと、好きな相手の話しかしてないって。
好きになると、その相手のことしか考えられなくなる。
それがどんなに怖いことかも、僕は知っている。
でも、それすらももう古い感情なのかもしれない。
もし、今僕があの人と出会っていたなら、もっと幸せな結末を迎えられたのだろうか。
だけど世の中の理に「もし」という名の現実は存在しないから。
それも運命なのだとうけとめるしかないのだから。
今は、恋する少女の後押しをしてあげようか。
テンちゃんは人間に恋してしまったがために不幸になった子だと思う。
恋した相手がコウキのご先祖とかだといい。(どう見てもさらばの影響です本当に以下略)
テンちゃんの初恋話も書いてみたいです。
でも時間がありませんorz
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