「兎でも何でもない」
今日も四天王にぼこぼこにやられたせいで機嫌がよくない。邪魔をしないでほしい。
「セツナのこの耳、動けば面白いのにのう」
「耳じゃなくて飾り。それに動いたところで何の意味があるの」
この飾りが動いてちょっとでも防御の足しになるのならいいのに。
「(僕が格闘タイプ相手に勝てるわけがないから、せいぜい時間稼ぎだ)
(攻撃の軸になるのはきっとクラとちゅらだから、あの二人が先制で1発で倒せれば勝機が見える)
(ってことは――)」
「眉間にしわが寄っとるぞー??」
はっ、と顔を上げると、今度は眉間のしわを伸ばされた。
「……今度は何」
「セツナ、一杯月見酒、どうじゃ?」
どこからともなく出てきたとっくりとおちょこ。
にっこり笑って差し出されたが、僕は当然飲めるわけがないのでお酌をした。
酒を飲んで、月を眺めて、思い立ったように僕の頭の飾りをいじり、
「月で餅つきはせんのか?」
なんて言ってくる。
「兎じゃないし、やるわけないでしょ」
「なんじゃ、つまらないのう」
ぐっ、と一杯飲んで、先ほどまで月を映していた酒がなくなる。
そんなに飲んで酔わないものかと常々思う。
また酌をする。
「――もう少し、肩の力を抜いてもいいと思うんだがのう」
「え?」
聞き返すが、聞こえているのかいないのか、月を見ながら酒を飲んでいる。
酌をして、ちらりと彼女の方を見て、
「(僕がファイみたいな性格だったら、苦労はしないのに)」
と思って、
「(…だからなのか)」
僕が惹かれる理由。
「…………ありがとう」
そういうところが、好きなんだ。
聞こえるか聞こえないかの声で、そっと呟く僕の気持ち。
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一緒にいるとほだされるから、気持ちが楽になっていいんだろうな、という私なりの結論。
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