こんこん。
「どうぞ」
一言声をかけると、きぃ、と音がして、ティーセットを運ぶ音と、それを運ぶ一人のメイド。
「お邪魔します…わぁ、いいにおいですねこのお部屋」
「そう?ありがとう。それで?用事があったんじゃないの?」
「あ、はいっ!あの、一緒にお茶しませんか?」
一歩、また一歩とメイドが歩くたびに、花の匂いがふわりと香る。
真っ白なテーブルに、メイドはかたり、かたりとケーキを置いて、かちゃかちゃとティーカップを用意する。
その手際はとても良いもので、部屋の主である騎士はその姿を穏やかに眺めている。
「どうぞ」
「ありがとう」
「この部屋、本当にいい匂いですね。それでお茶の匂いもちゃんとわかる…いい匂い」
「花の香りのお香よ。あたしも好きなのこの匂い」
部屋の中は花の香りのする香が焚き染められていた。
花の香りとは言え、そこまできつい匂いがするわけでもなく、茶を楽しめるほどのほのかな香りだった。
「それよりも…今日の紅茶はいつにもまして美味しいわね」
「今日の紅茶葉はいつもよりもいいものを使ってるんです。お口に合うようで何よりです」
「あなたの紅茶を淹れ方がいいんじゃないの?こういうのって」
「そ、そんなことないですよ!わたしなんてまだまだです。いつも怒られてばっかりで…」
――そう、そんな健気なところが愛おしい。
――それなのに彼女の気持ちに全く気付かないあの男。
メイドの言葉に薄く笑みを浮かべ、騎士は答えた。
「それはあいつの舌がおかしいだけよ、本当に美味しいわ」
「そ、そうですか…?ありがとうございます」
メイドは褒められて少し照れくさいのか、頬を少しだけ染めてはにかんだ。
「……ふあ……なんだか…眠くなってきました……」
「あら、大丈夫?疲れがたまってるんじゃない?そこのソファで休みなさいな」
にこりと騎士は微笑んで立ち上がり、メイドにソファへ向かうよう促す。
メイドは立ち上がると、ふらふらしながら歩みを進める。
あまりにふらふらするものだから、途中で騎士は彼女に肩を貸した。
――そこまで気がないのならば、あたしがいただくけれどもいいかしら?
ばすっ、とソファに座るメイド。
そのまま長いソファに崩れるように横たわり、彼女は眠りに落ちた。
「――本当に可愛い子。あたしが毒の使い手だということも忘れて」
眠るメイドの頬に軽く触れて、ふわりと笑い、騎士は軽く口づけを落とした。
あたしの毒からは誰一人逃れられない…と、いうわけで百合に目覚めそうですどうしましょう。
部屋中に焚き染められた香は、催眠性の毒が含まれていた、というオチです。あるある。
も、もちろん非公式ですよ!!!!!!公式だったら怖い怖い。
親がこんなことやっていいのかっていうね。いいんだよ。
疲れてカッとなってやっただけです。
どうやら自分は疲れていると百合に走るようです。
つか…ここのパーティはノマよりも薔薇百合が似合う気がするのは気のせいか。
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