「本当に、いいのか?」
「…怖く、ないですから」
囁かれた問いに、ぽつり、そう答えて、ちらり、前を見る。
頑なに唇を重ねるのを拒んでいたのは、舌を噛み切られてしまうと思ったから。
優しい言葉のその裏には憎悪があるのだ――そんなことはないと分かっていても、ちらちらと、あの日の惨劇が脳裏を掠める。
舌を噛み切られて死んでしまうのが関の山ね、そう言ったあの人も、舌を噛み切られて死んでしまった。
体を重ねるのを拒んでいたのは、私のすべてをぐちゃぐちゃにされてしまうと思ったから。
恐怖の上にのしかかる、絶望を見せつけられて、私は。
あなたは絶対に幸せになってね、そんなことを言われた、あの日の記憶がよみがえる。
ここまでのことを思いながらも、怖いわけではないのは、事実。
だけど、心ではそう思っていても、身体はしっかりと恐怖を覚えているようで。
貴方になら何をされても構わない、そう思っていても身体がそれに応えようとしない。
どうして?どうして?
「……あの、」
見上げて、少し気まずくて目を伏せて。
わずかに視界に影がかかったと思ったら、
ふわり、心地よい温もり。
「無理しなくて、いいから」
「…あの、そうじゃ、なく「だったらどうしてこんなに肩、震えてんだよ」
ぎゅ、と、少し痛いくらい抱きしめられて初めて気づいた、明確な拒絶。
本当は怖いの?
どうなの?
教えて、私。
「……ごめんなさい…」
どんなにどんなに大好きでも、今はまだ、底知れぬ恐怖に勝ることはないようで。
「嫌なら嫌って、言えっつったろ」
「嫌じゃ、なかったん、です」
抱きしめられただけで自然と震えは治まって。
それを確認したかのように身体は離れて、温もりは去って。
「……悪かった」
あなたが悪いわけじゃないのにそんな風にいうものだから。
「あ、あの…っ」
嫌われちゃうのかな、と思って。
軽くなら、軽くなら大丈夫、たぶん。
真正面に見据えて。
少しだけ、本当に掠めるだけの口づけを。
トラウマがあるのです。とだけ。
売り飛ばされた先で世話を焼いてくれたひとは、相手に毒を飲ませて殺そうとしたら逆にそれがばれて舌を噛み切られたんです。みたいな。そのひときっと毒タイプとかだったんですよ。
目の前で「お前も近いうちにこれをやることになるから」と言われて、連れてこられてすぐにいろいろ見せられたりしたんだと思います。
そして経営者とかの一人があの種族だったらもっと話的には美味しいと思う。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
と、いうわけで、ちゅーは高確率で拒みます←
だけど不意打ちとかでやってもいいんじゃないかな。なんて。
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